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凰黎の隣にいた凰神偉が口を開く。彼は先ほどまでずっと黙って煬鳳たちのやりとりを見ていた。
「彩鉱門へは私のほうから伝えよう。直接伝えに行くよりも、そのほうが早く伝えることができる」
驚き返答に詰まる煬鳳の肩を、凰黎が歩み寄り支えてくれる。
「煬鳳、彩鉱門のことは兄上に任せましょう。恒凰宮と彩鉱門とは交流がありますから。煬鳳はまず、貴方の霊力についての問題を解決しましょう。鸞快子も、煬六郎殿もそのつもりでしょうから」
「凰黎……」
自分のことなど構っている暇はない。
先ほどまではそう考えていた煬鳳だったが、凰黎の顔を見てすぐ自分が愚かなことを考えていたのだと気づいた。
(そうだった、凰黎は俺の体の異常をなんとかするために、ずっといままで行動していたんだ。それなのに……)
己のことは捨て置いて、煬鳳の体を心配し、治すためだけに一緒にここまで来てくれた人。
「ごめん凰黎。俺、浅はかだった」
「思いつめないで。誰も責める気はないのですから」
俯く煬鳳の頬を、凰黎が優しく包み込む。
「有り難う。……宮主殿、彩鉱門の件、よろしくお願いします」
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