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「心得た。……くれぐれも、私の阿黎を悲しませることのないように」
「ははは……」
先ほど危うく悲しませかけたからか、凰神偉の言葉は多少棘があるように聞こえる。
「必要なものがあれば、燐瑛珂に遠慮なく伝えて欲しい。恒凰宮で賄うことのできるものならなんでも協力しよう」
凰神偉は燐瑛珂に煬鳳たちの助けになるようにと言い含めると、自らは彩鉱門へ連絡を取るために部屋をあとにした。
凰神偉が部屋を出て行ったのを見届けると、鸞快子は一同を見回す。
「さて……善は急げとはいうものの、夕餉の時間もとうに過ぎている。せっかく恒凰宮で用意してくれたものなのだから、煬鳳の霊力の調整については夕餉が終わったら始めようか。それまでに私は燐殿と準備を済ませておこう」
「大事なことの割には夕餉のほうを優先するんだな」
「当たり前だろう。こういうときには体力だって大事だ。それに、今すぐ始められるわけではないのだから、時間は有効に使わなければならないだろう。……何より、煬六郎殿は君のために忙しい合間を縫ってきてくれた。感謝の気持ちを込めて、夕餉の時間くらいは共に過ごしなさい」
「へ~い」
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