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振り返ると、そこにいる人物。
「あー、ごほん。小鳳?」
拝陸天のわざとらしい咳払いが聞こえた。慌てて声の方向へ体を向ければ、座ってこちらの様子を見つめる叔父の姿がある。
「陸叔公、もしかしてずっとここに居てくれたのか?」
「もちろんだ。昨晩の治療が始まってからいまに至るまで、凰殿と共に不眠不休で小鳳の看病をしていたのだぞ」
得意げに頷く拝陸天に、煬鳳は慌てて頭を下げた。一番遠くから煬鳳のために駆け付けてくれたというのに、礼の一つも言わぬままでは申し訳が立たない。
「気づくのが遅れてごめん、陸叔公。それに凰黎も有り難う」
拝陸天はニコニコと上機嫌で、そんな煬鳳の頭を撫でつける。
「案ずることはない。可愛い甥のためなのだから当然のこと。……私は魔界の皇帝ゆえ、あまり表立って原始の谷に行くことはできぬが、原始の谷に向かった彼らにもしも危険が迫ったら、一瞬で彼らの元まで行くことができる」
「そんなことが!?」
「うむ。……彼らが旅立つ前にそのような盟約を交わしておいた。だからそう鸞快子殿を責めないでやってくれ。彼は小鳳に必要な人物だ。そして、誰よりもそなたを心配している凰殿のことも」
「は、はい。ごめんなさい、陸叔公」
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