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自分でも驚くほどしおらしく、煬鳳は拝陸天に謝った。どれほど沢山の人たちの協力があって、こうしていま自分が存在しているのか。それがとてもよく分かったからだ。
「謝ることはない。しかし、謝るときは私ではなく二人に、な?」
拝陸天は片目を瞑って微笑むと、凰黎たちに視線を向けた。
「うん。ごめんな。鸞快子、それに凰黎。二人とも本当に有り難う」
「良いんですよ、煬鳳が無事なら、それだけで」
凰黎は涙声でそう言うと、煬鳳のことをもう一度抱きしめる。
「これから先は、霊力を使っても異常なほど体温が上がることはありません。……ですが約束して下さい」
「なにを?」
「いくら術や霊力が気軽に使えるような状態に戻ったからといって、絶対に無茶はしないこと」
「もちろんだよ」
すぐさま、煬鳳は頷く。当然といえば当然のことで、反論する理由もない。
「それから……命は大切にすること。貴方の命は貴方だけの物ですが、無茶をしたら悲しむ人がいます。私だけではなく、貴方の叔父であったり、亡き母君や父君だってそうです。どんなときも、それを忘れないで」
「……分かったよ。約束する。心配性だなあ、凰黎は」
そう言って煬鳳は笑ったが、凰黎の表情が不安そうであることに変わりはない。
「煬鳳。一つ伝えなければならないことがある」
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