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――俺ってなんて馬鹿なんだろう。
いつも目先のことばかり考えて、自分を心配してくれている人のことをないがしろにしてしまう。あとから気づいてばかりの己の思慮のなさに煬鳳は溜め息をついた。
「煬鳳……?」
不安そうな凰黎の声。
「いや。……凰黎の言う通りだ。火龍のことは心配だけど、半日ぶん焦ってどうなるものでもないよな。万全を期すためにも、今日はここでゆっくり休ませてもらうよ」
煬鳳が笑いかけると緊張した凰黎の表情がたちどころに和らいだ。
「でもいくら休むって言っても、寝てばかりじゃ体が痛いよ。それに稀飯だけだと物足りないかな。朝餉も食べてなかったしさ」
「ふふ。良かった、お腹が空くのは元気な証拠ですね。……分かりました、食べやすいものをあとで持ってきて貰いましょう」
「うん!」
元気よく煬鳳は頷き、そして寝台から足を降ろす。すぐさま凰黎が手を取って支えてくれたのだが「無理はいけませんよ?」と念を押されてしまった。
「大丈夫。少し中庭に出たいんだけど、駄目?」
「そうですね……」
凰黎は柔らかく微笑むと煬鳳の背に手を回す。
「日の光を浴びることも大切です。少し散歩に出ましょうか」
「うん!」
もう一度煬鳳が元気よく頷くと、背後でなにか主張したげな気配がする。煬鳳はそれがなにを意味するのかをすぐに理解して振り返った。
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