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「煬六……じゃない、陸叔公も一緒に行こう」
すぐさま椅子から飛びあがるように拝陸天が立ち上がる。
「小鳳の誘いなら喜んで!」
心底嬉しそうに彼は答えたのだった。
* * *
散歩の前に沐浴のための湯を持ってくると言って、拝陸天と凰黎は部屋をあとにした。
煬鳳は窓辺に佇み皆が戻ってくるのをぼんやりと待っている。
睡龍の件も残っているというのに、翳黒明は小黄や凰神偉と共に原始の谷へ向かってしまった。自分の体にも直結する問題であるというのにだ。
凰黎に残した伝言で彼は『小黄のことは必ず守る。俺はまだ五行盟に行くことは難しいだろう。何より彼らがまだ納得できないだろうから。……頼る形になって悪いが、あとで必ず駆け付ける。だから今は、五行盟のことを頼む』と言っていたらしい。自分のことなのに無責任だと思えなくもないが、確かに黒冥翳魔と呼ばれ五行盟に封印までされていた翳黒明をいま五行盟に連れて行くのは難しいだろう。
そう考えれば翳黒明の決断は妥当なものだと言える。
「はあ、色々なんか難しいな」
思わず煬鳳は溜め息をつく。
体の調子はすこぶる良い。
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