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鏡に映した頸根の痣は鮮明に残ってはいるが、煬鳳がいくら霊力を使おうとも燃えるような熱を帯びることはなくなった。
(嘘みたいだ……)
しかし、それが嘘ではないということも分かっている。何より、黒曜の尻尾が煬鳳の首から繋がっていないことが何よりの証し。
ただ、切り離されたとはいっても完全ではなく、煬鳳から離れられる距離は前とさほど変わりはないらしい。
『クェ』
外を飛んでいた黒曜が戻ってきたようだ。煬鳳が格子戸を開けてやると、翼を広げた黒曜が窓枠にちょんと留まる。
「気分はどうだ?」
『悪くないな。煬鳳、ちょっと霊力を上昇させてみてくれないか。それで、余剰分を俺に送って欲しいんだ』
「やってみる。……こうか?」
煬鳳は丹田に力を込め己の体の霊力を高める。今までならば、霊力の上昇と共に体温も上昇していたはずだ。けれど、一定まで霊力が上がったあとは体への負担もかかることなく黒曜の体に霊力が流れてゆくのを感じる。
『お、来てる来てる』
今までなら首の痣から黒曜へと繋がっている尾を通して霊力が融通されていた。それが、見た目は黒曜と煬鳳の繋がりは完全に切れているにもかかわらず、自然に煬鳳の体の霊力が黒曜に融通されているのだ。
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