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鸞快子の話したことは難しいが何となく煬鳳にも分かった。睡龍は龍の脅威のお陰でこうして他国の侵入を防げてはいるが、もしこの地にいる者が無力であると思われてしまったら今度は積極的にこの地を侵略しようとやってくるだろう。
国師自体に侵略の意図がなくとも、周りがどう受け止めるかが大事なのだ。
「鸞快子は凄いな。色んなことを考えてるんだ」
「なに、今だけの話だ。それに――今後のためにも恩は売っておくに越したことは無い。売れるだけ売りまくる」
「……それ、まだ続いてたんだ」
「当然」
まさか、最後に出てきたのが『恩は売りまくる』という結論であったとは思いもよらなかった。呆れた顔で煬鳳は鸞快子を見る。
当の鸞快子は「それがなにか?」とでも言いたげな顔をしているのだから、たちが悪い。
「それよりも――何よりも守らねばならないのは原始の谷の秘密だろう」
鸞快子は格子窓の外を見やり、ぽつりと呟く。
「万晶鉱は強力だ。今も門派の者たちが原始の谷に向かいつつある。もし万晶鉱の力が、睡龍の外にまで知れ渡ってしまったら、間違いなくこの地は周囲の国から襲撃を受けるだろう」
そんなこと考えたこともなかったが、現実にいま他の門派の者たちが万晶鉱を手に入れるべく、姿を見せた原始の谷に向かっているのだ。
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