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「おおよそ全てのことは知っている。君が言いたいのは……万晶鉱に触れると、途方もない記憶の数々が直接頭の中に流れ込み、結果未来や過去の出来事を知ることができる。しかしそれと引き換えに脳が情報の乱流に耐え切れず、結局その者は死に至る――ということではないか?」
「驚いた……」
まだ煬鳳は一言しか鸞快子に語ってはいない。なのに鸞快子から返ってきた言葉は、凰黎の話してくれた万晶鉱についての情報とほぼ齟齬が無い。
「それで、君が聞きたいのはどのようなことかな? 遠慮せず話してみるといい」
顎に軽く手を当てた鸞快子は煬鳳が語るのを待っている。
ここまできっぱり万晶鉱について彼が話したのは、もしかしたら煬鳳が尋ねたいことを言いやすくしてくれるためだったのかもしれない。
何故だか煬鳳はそんなことを考えた。
「あのさ。もしも未来を見ることができたら、不都合な未来を変えようとしたり、知ってる未来のことを利用しようと思ったり……なんでもできるんじゃないか? 普通みんな思うことだよな?」
鸞快子は口を引き結び、煬鳳のことをじっと見つめる。
「俺、変なこと言ってるかな? 言い伝えにあった全ての富と栄誉を手に入れるってそういう意味だよな?」
「……確かに言い伝えの趣旨としてはそうだろうな」
彼の答えは肯定しているようであり、どこか否定的なものを感じさせた。
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