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「なら……」
「しかし、ならば未来を簡単に変えることができるか、というとそれはまた別の話になる。ゆえに、言い伝えもあくまで言い伝えであって『そうであった』とは言っていないのだ」
煬鳳には鸞快子の言っていることが良く分からない。全ての富と栄養が手に入るというのは嘘だったのだろうか。
「でもさ……でも、そうだとしても。もし記憶の奔流を乗り越えて無事であったとしたら。過去から未来の中で自分がひとつでも変えたいものを見つけたのなら。誰しも知り得たことを上手く使おうとしないのか? 変えたいと思わないのか?」
鸞快子は何も言わない。ただ、煬鳳のことをじっと見つめている。
どうして何も言ってくれないのかと煬鳳は思ったが、暫くして鸞快子は言葉を探しているのだと気が付いた。
「そうだな……煬鳳。君は『因果律』という言葉を知っているか?」
初めて耳にした言葉に煬鳳は素直に首を振る。
「いいや、初耳だ」
鸞快子は「だと思った」と笑う。
「平たく言えば……全ての事象はそれぞれ因果という根で繋がっている、ということだ」
「……全然分からない」
「ある行動は即ち未来の出来事に直結している。同様にその逆の現象もまた然り。万晶鉱に映し出される未来というものは、『既に確定された未来』であり、変えようと思うこと、行動すること自体が織り込み済みの結果なのだ」
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