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聞き慣れない言葉ばかりが出てきた煬鳳は、理解しようと努力したもののさっぱり飲み込めない。顔をしかめながらうんうんと言っていると鸞快子が煬鳳の頭を撫でつけた。
「つまり……過去であれ未来であれ、垣間見た時点から目にした光景が現実になるまでの間。当然ながら『自分が過去を変えようとした行動』も含まれているということ。仮に我々が未来を見たとして、驚き、恐れ、足掻いた事実も全て、定められた未来に至るまでの道程にほかならない」
「よく分からないけど、それって……決まった過去や未来を変えることは凄く難しいってことか?」
煬鳳の言葉に鸞快子は静かに頷いた。
「概ね正解だ。だから運命を知っているからといって、何かが変わるのかと言うと……実は案外何も変わらない。寂しい話だがそういうことになる」
せっかく知り得ない過去未来を見たとしても結局見るだけで何も変えることはできない。介入することは叶わないと知って、煬鳳は激しくがっかりした。
「つまり、未来は決まってるってこと? 変えられないってことか?」
「さあ、それはどうだろうな? 煬鳳、君はどう思う?」
「俺は過去も未来も見たことがないから分からない。でも、過去は変えられないかもしれないけど、もしも凄く願っている未来に変えられる可能性があるのなら、俺は全力で変えたいって思うよ」
「君らしい言葉だ。……現実がどうであれ――そういう猪突猛進なところが、可愛らしい」
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