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「散歩をするのではなかったのですか?」
「散歩のついでに昼寝をしたっていいだろ?」
「もちろんですよ」
少し意地悪なことを凰黎は言うが、顔は穏やかで幸せそうに微笑んでいる。そんな凰黎の笑顔を見るたび煬鳳は、
(あぁ、やっぱり今日は恒凰宮に泊まることにして良かった!)
と思うのだ。
水辺には楊柳がしなだれており、そよぐ風を受け柔らかい動きで葉を揺らす。その脇には煬鳳たちと共に散歩に出たはずの拝陸天の姿があった。
(お邪魔虫だったことを自覚して、拗ねてる……)
気を利かせ散歩に誘ったはずの叔父は、完全にお邪魔虫だったのだ。
申し訳ないと思ったが、煬鳳もまだ無茶をしてはいけないので、こうして日向ぼっこしながら寝ているくらいがちょうど良い。
必然的に拝陸天が……余ってしまったのだ。
(陸叔公、ごめん……)
一応何度か話しかけたりはしたのだ。したのだが、叔父自身、煬鳳たち二人の幸せを邪魔するほど大人げないことはしたくなかったらしい。
拗ねながらも大人しく一人遠くから二人の様子を眺めているようだ。
(それもそれで落ち着かないけど……)
とはいえ、ここまでして貰っているのだから、贅沢は言えない。
「なあ、凰黎」
煬鳳は膝の上から凰黎を見上げる。そこには眩しいほどの凰黎の笑顔があった。
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