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「なんですか? 煬鳳」
「あのな、ここまで一緒に来てくれて有り難う」
「どうしたんですか、急に改まって」
だって、と煬鳳は言う。
「あの日から、ずっと俺のために一緒に清林峰に行って、黒炎山に行って、魔界にも行って、恒凰宮にも戻ってきた。ずっと一緒にいてくれて、俺のために沢山無理もしてくれたよな。ほんとに有り難う。……俺、これからはいっぱい凰黎に今までのお礼をするからさ――」
言っている途中で恥ずかしくなってしまい、煬鳳はごろりと寝返りをうつ。表情を見られないようにさりげなく手で顔を隠すと、凰黎に仰向けの状態に戻されてしまった。
「……」
恥ずかしい。まじまじと見つめられて耳が熱くなるのを感じる。
(もしかして……また体温が!?)
焦って耳を触ったが、誤差程度の熱さだ。向かい合う凰黎は少しだけ悪戯めいた笑みを浮かべている。それがまた美しくて煬鳳の顔はさらに熱くなった。
「ふふ、慌ててどうしたんですか?」
「な、なんでもないよ」
指摘されてもなお、気恥ずかしさに歪む自分の表情が照れくさく、つい顔をそらす。しかし、すぐに凰黎に背けた顔を両手で包まれたまま、抱きかかえられてしまった。
「お礼なら、煬鳳がこれからもずっと一緒に居てくれたらそれが一番です」
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