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(そういえばもっと食べたいって俺、言ったっけ……)
稀飯だけでは食べたりなかった煬鳳のために、凰黎が軽い食事を貰えるようお願いをしてくれたのだ。
「行こうか」
煬鳳は凰黎の手を引いて立ち上がる。
既に水榭には鸞快子と拝陸天が座っており、とりわけ拝陸天は早く来いとばかりに煬鳳たちを見つめている。そんな叔父の姿に煬鳳は頬を緩めると、彼に向かって大きく手を振った。
「わあ、美味しそうだ!」
並べられた食事の数々に煬鳳は感嘆の声をあげる。汁物や饅頭に鴨肉など、短時間で用意したとは思えない豪華さだ。
「凄いな! こんな短時間で用意したのか!?」
「まさか。鴨肉を煮込んだ汁物は、朝餉を用意したときの残りに手を加えたものです。饅頭はたまたま準備しておいたものを蒸しました。……他の料理も大体有り合わせです」
燐瑛珂は淡々と『これくらいは大したことではない』とでも言いたげに続けたが、煬鳳にとってはどれも凄い料理ばかりだ。
しかも、料理の選び方から見るに、彼はまだ本調子とは言えない煬鳳のために比較的食べやすいものを選んでくれたのだろう。
そう思うと感謝の念しか出てこない。
「有り合わせでこれだけ作れるんだから凄いなあ。有り難う、燐瑛珂」
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