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心からの煬鳳の感謝に、燐瑛珂は無言で頭を下げると「冷めないうちにどうぞ」と皆に食事を勧めた。
煬鳳が饅頭に被りつく様子を凰黎はじっと見つめている。煬鳳は頬張った饅頭を飲み込めむと凰黎に向かってニッと笑った。
「美味しい!」
「良かった。あとで皆さんにもお礼を言ってきますね」
煬鳳の言葉に凰黎も綻ぶ。
「二公子も、それに鸞快子殿と煬六郎様もお召し上がりください。……お三方とも煬殿と同じように朝餉を召し上がっておられないのですから」
「えっ!?」
三人が何も食べていないと聞いて煬鳳は驚いた。
「俺には稀飯を食べさせてくれたのに、三人とも何も食べてなかったのか!?」
「凰殿が小鳳が目覚めるまでは食べぬと申したのでな。もとより食事など頻繁に取ることは少ない、だから敢えて目の離せぬときに食べる必要はないと思ったのだ」
拝陸天はどちらかというと凰黎への対抗心から食べなかったようにも思えるが、根っこの部分はやはり煬鳳の容態を気にしてのものだったようだ。
「煬鳳が目覚める前に食事などできるはずもないでしょう? ようやく念願叶って、煬鳳の頸根の治療をすることができたのですから」
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