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「己を過信してはいけない。全力で戦えるということは、より無理ができるようになり……今よりさらに危険なことも起こりうるということだ。以前小鳳は己の体の事情も顧みず私のことを助けようと体を張って黒冥翳魔を退けてくれたな」
彼が言っているのは、拝陸天の別邸で翳黒明――かつての黒冥翳魔が襲ってきたときのことだ。煬鳳は初めて出会った自分の叔父を守るため、全力の霊力で黒冥翳魔を弾き飛ばした。
その後どうなったかは、語るべくもない。
「私を想い守ろうとしてくれた、そなたの気持ちはとても嬉しい。しかし、己を顧みないようなことをしてはならない。……小鳳の周りにはいつでもそなたを想う者たちが沢山いる。無茶は命を削らない程度にすること。分かったかな?」
「陸叔公……」
もしも――。
もしも今、煬鳳の両親が生きていて目の前に座っていたら、きっと同じことを語ってくれたのだろう。そう思うと無意識に目頭が熱くなる。
「っ……ごめん、陸叔公」
零れる涙を堪えきれず、煬鳳が涙声で拝陸天に告げると、顔色を変え拝陸天がおろおろと狼狽えてしまった。
「ど、ど、どうした!? 小鳳!? もしや余計なことを言ってしまったか!?」
「違う、違うんだ……」
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