08:五趣生死情侣们(恋人たち)

73/85
前へ
/1358ページ
次へ
「己を過信してはいけない。全力で戦えるということは、より無理ができるようになり……今よりさらに危険なことも起こりうるということだ。以前小鳳(シャオフォン)は己の体の事情も顧みず私のことを助けようと体を張って黒冥翳魔(こくめいえいま)を退けてくれたな」  彼が言っているのは、拝陸天(バイルーティエン)の別邸で翳黒明(イーヘイミン)――かつての黒冥翳魔(こくめいえいま)が襲ってきたときのことだ。煬鳳(ヤンフォン)は初めて出会った自分の叔父を守るため、全力の霊力で黒冥翳魔(こくめいえいま)を弾き飛ばした。  その後どうなったかは、語るべくもない。 「私を想い守ろうとしてくれた、そなたの気持ちはとても嬉しい。しかし、己を顧みないようなことをしてはならない。……小鳳(シャオフォン)の周りにはいつでもそなたを想う者たちが沢山いる。無茶は命を削らない程度にすること。分かったかな?」 「陸叔公(りくしゅくこう)……」  もしも――。  もしも今、煬鳳(ヤンフォン)の両親が生きていて目の前に座っていたら、きっと同じことを語ってくれたのだろう。そう思うと無意識に目頭が熱くなる。 「っ……ごめん、陸叔公(りくしゅくこう)」  零れる涙を堪えきれず、煬鳳(ヤンフォン)が涙声で拝陸天(バイルーティエン)に告げると、顔色を変え拝陸天(バイルーティエン)がおろおろと狼狽えてしまった。 「ど、ど、どうした!? 小鳳(シャオフォン)!? もしや余計なことを言ってしまったか!?」 「違う、違うんだ……」
/1358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加