08:五趣生死情侣们(恋人たち)

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 その夜、煬鳳(ヤンフォン)は誰かの涙で目が覚めた。 「凰黎(ホワンリィ)……?」  誰か、というまでもなくそれは凰黎(ホワンリィ)の涙だ。煬鳳(ヤンフォン)は彼の表情を確認しようと顔をあげる。凰黎(ホワンリィ)の腕の中にいるため、彼が目覚めないように体を動かすのは至難の業だ。しかし、慎重にゆっくりと煬鳳(ヤンフォン)は体の向きを移動させる。 (やっぱり、泣いてる……)  微かな月明かりに浮かびあがる美しい顔。白く艶めく相貌には夜露のような一筋が流れている。普段は穏やかな表情の彼が、微かに顔をしかめ、苦悶の感情をにじませていた。  起こそうか、起こすまいか。  逡巡ののち、煬鳳(ヤンフォン)はそっと凰黎(ホワンリィ)の頬に手で触れる。触れた瞬間に凰黎(ホワンリィ)の眉が跳ねてどきりとしたが、彼が目を開くことはなかった。 (震えている……?)  微かに凰黎(ホワンリィ)の体が震えているように感じ、煬鳳(ヤンフォン)は腰に回していた手を凰黎(ホワンリィ)の背中へと滑らせる。  清瑞山(せいずいさん)で一緒に寝ていたときはこんなこと一度もなかったはずだし、旅をしているときだって同じだった。  ならば今日が初めてなのか?  それとも煬鳳(ヤンフォン)が気づかぬうちに凰黎(ホワンリィ)はいつの頃からかこうして眠りながら泣いていたのだろうか?  煬鳳(ヤンフォン)の体を心配してのことなら理解できる。しかし、煬鳳(ヤンフォン)の霊力に関する懸念は全て払しょくされたはずだし、唯一の懸念点は睡龍(すいりゅう)のことくらいなものだ。
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