08:五趣生死情侣们(恋人たち)

76/85
前へ
/1358ページ
次へ
(どうしよう……黒曜(ヘイヨウ)を呼ぶか?)  しかし、黒曜(ヘイヨウ)を呼び出そうとしても彼は煬鳳(ヤンフォン)の体から出てくる気はないようだ。どうやら『恋人のことは自分でなんとかしろ』ということらしい。 (あの野郎……)  次出て来たときに絶対モミモミしてやる、と心に誓い煬鳳(ヤンフォン)は溜め息をつく。凰黎(ホワンリィ)の辛そうな表情は変わらない。煬鳳(ヤンフォン)凰黎(ホワンリィ)をしっかりと抱き抱え、彼の背中を優しく撫でた。 「凰黎(ホワンリィ)。俺がついてるよ。大丈夫だ」  起こさない程度の小さな声で凰黎(ホワンリィ)に言い聞かせながら背中を撫で続ける。同時に凰黎(ホワンリィ)の表情を観察していると、少しずつ表情は和らいでいくように思えた。 (良かった……)  悪い夢でも見ていたのだろうか。 「煬鳳(ヤンフォン)……?」 「あ……」  安堵したのもつかの間、凰黎(ホワンリィ)は目を覚ましてしまったらしい。起こさないつもりだったのに、申し訳なさで「ごめん」と告げると、凰黎(ホワンリィ)は口元を緩ませながら首を振る。 「もしかして……心配してくれたのですか?」 「うん。……なんか、辛い夢見てるみたいだったから」  凰黎(ホワンリィ)は恥ずかしそうに笑うと寝台から降りる。煬鳳(ヤンフォン)が声を掛けようとすると「少し待ってて」と言う。自らは傍に置いた外衣を羽織り、煬鳳(ヤンフォン)の体に被褥をしっかりと被せ、暗闇の回廊へと消えてゆく。
/1358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加