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「どんな夢か、聞いても良いか? その、少しは凰黎の心が軽くなるかもしれないしさ」
おずおずと煬鳳は申し出た。
凰黎の性格だと、また煙に巻いてしまうだろうか。
できれば聞かせて欲しい、少しでも心の内を見せて欲しい。そんな気持ちを抱えながら煬鳳は凰黎の言葉を待つ。
「……大切な人を喪う夢」
衝撃のあまり煬鳳は息をのむ。
凰黎が『大切な人』という人物は相当限られている。
もしも彼の言う大切な人が煬鳳であるのならば――少し前に夢に見た、あの光景を思い出す。
(いや、でもあれは俺の夢だし……)
すぐに浮かんだ考えをいったん振り払う。
「…………以前から時折そういった夢を見ることはあったのです。ただ……ここに来て久方ぶりに見てしまったのです。それが以前よりもはっきりと見てしまったものですから、随分と煬鳳に心配をかけてしまったようですね。すみません」
「謝ることなんかないさ。……あのさ、もしかして夢で失うのは、俺だったりするのか?」
凰黎の瞳が一瞬収縮した。
つまり、図星ということだ。
普段はあまりそういった感情を悟らせない凰黎が、ここまで明確に動揺するのは珍しい。
「……見抜かれたからには、正直に答えなければいけませんね。その通りです」
見抜かれなかったらしらばっくれるつもりだったのだろうか、と内心思う。
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