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「まあ……凰黎に嘘はつけないよな。でも、それだけじゃないさ。明日になったら五行盟に行かなきゃいけない。そうしたら睡龍とのこともなんとかしないといけないし……今日みたいな穏やかな一日は暫く戻ってこないだろ? だから……その……」
急にまた気恥ずかしくなってしまい、煬鳳はそっぽを向く。だんだん自分の顔が恥ずかしさで歪んで来たのが分かったから、それを凰黎に観られたくなかったのだ。
「だから、えっと……。二人で楽しい気持ちになりたかったんだ。辛い夢で涙を流してる凰黎を放っておきたくなかったし、話を聞いたなら尚のこと……。このままの気持ちで朝を迎えたくなくて。それに、俺も凰黎と……あっ!?」
不意に体を抱え上げられ煬鳳は声をあげた。抱えた当人の顔を見やれば「いいですか?」と尋ねられる。
「……」
頬が、耳が熱くなるのを感じながら煬鳳はこくりと頷いた。
――元よりそのつもりで凰黎に悪戯をしたのに、今さら恥ずかしがるなんて滑稽だ。
自分でもそう思うのだが、性分なので仕方ない。
寝台に降ろされると、すぐに凰黎が首筋に顔を埋めてきた。くすぐったさに思わず身を捩ると両手を押さえつけられ動きを封じられてしまう。
「凰黎」
煬鳳が呼びかけると凰黎が身を起こす。真上から見下ろす凰黎の目が色を帯びていた。
「煬鳳」
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