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先ほどからずっと名残惜し気に煬鳳の姿を見ていた拝陸天だったが、ようやく別れの言葉を言う決意を固めたようだ。
もちろん、別れといったって一時的なもの。また必ず会えるはずなのだ。
「永覇はこの前も翳冥宮で俺のことを助けてくれたよ。有り難う、陸叔公」
「あああ、無理をして駆け付けたというのに、見送らねばならぬなど……寂しい!」
堪らず拝陸天は煬鳳を抱きしめる。くすぐったいが、心の底から愛おしい。
「俺だって寂しいよ。……でもそろそろ行かなきゃ。火龍のことは不安だけど……」
「もしも小鳳に危険が迫ったら、私が火龍を仕留めてみせる!」
「それは駄目だ! 仕留めたら色々あとが大変だから! せめて気づかれないように仕留めてくれ!」
「む、そうか」
「……」
睡龍からあからさまに龍が消えてしまったら、色々外圧が面倒になる。それだけはゆめゆめ忘れないようにしなければ。
「もう、とにかく俺は行くから。小黄のことも頼んだよ」
「任せて欲しい」
胸を張って拝陸天は大きく頷き、そして煬鳳に微笑んだ。
煬鳳は凰黎に「ごめん、待たせたな」と言って謝ると、凰黎は「大丈夫ですよ」と笑顔を見せる。――きっと原始の谷にいる兄のことを重ねていたのだろう、煬鳳はそう感じた。
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