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「陛……煬六郎殿、それでは失礼いたします」
「小鳳を頼むぞ、凰殿」
拝陸天の言葉に凰黎は強く頷き、そして煬鳳を見る。煬鳳はそんな凰黎に頷き返し彼の手を取ると、二人連れ立って鸞快子の元に向かった。
* * *
盈月楼にやってきたのは久方ぶりだ。精巧な翹角の輪郭や鮮やかな緑が空からでもよく見える。庭園には蒼翠欲滴の草木で美しく彩られ、まさに青山綠水を体現しているといえよう。初めてやってきたときと同じように湖の水榭では数人の楽師たちが琵琶や筝を演奏していたが、瓊瑤の羽ばたきの音に気づいてすぐに煬鳳たちを出迎えてくれた。
「旦那様、お帰りなさいませ」
「旦那様」
「奥でお休みになりますか? 茶と菓子をご用意いたします」
女たちは代わる代わる鸞快子に言葉をかける。
しかし鸞快子は、
「これから急ぎの用向きがある。気持ちだけ有り難く受け取っておこう」
と言って彼女たちの好意を丁重に断ると、代わりに取り巻きの一人に尋ねた。
「そうだ、ここまで載せてくれた瓊瑤に礼がしたい。彼女の好きな果物はあるか?」
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