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五行盟本部にやってきた煬鳳たちだったが、入り口が妙に騒がしいことに気づいて足を止める。普段は開け放たれた大きな門の両脇に門番がいて、自分が何者であるかを告げれば大概すぐに中へと通してくれるのだが、今日は不思議なことに、門の周りに人だかりができていた。
『なんだか騒がしいな』
煬鳳の肩に留まる黒曜は、目の前で起こっている光景を見ながら小声で囁く。
「何かあったのでしょうか……?」
怪訝そうな顔で凰黎が人だかりの向こう側を観察しているが、結局なにも分からない。静かに首を振り、
「どうやら直接聞いてみるしかないようですね」
と溜め息交じりに言った。
「一体何事だ?」
進み出た鸞快子が門番に尋ねる。鸞快子は名目上五行盟に所属しているのだ。もちろん大概の門番たちとは顔見知りであるし、盟主の傍にいることの多い彼を見て門番たちも知らぬはずもない。
門番たちは鸞快子を見るなり姿勢を正し、拝礼をした。
「これは鸞快子様! そ、それが……少し面倒なことがありまして」
「面倒なこと?」
首を傾げた鸞快子に、門番たちは「実は……」と言って視線を動かす。その視線の先にいるのは――見たこともない人物だ。
(誰だ?)
厳かな佇まいと彼の纏う荘厳な法衣、そしてこれだけ沢山の人々に囲まれても湛然不動としている様子は、この人物が只者ではないことを物語っている。
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