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橙紅色をした丸襟の衣袍を纏う青年は、五行盟の受付担当の瞋熱燿だ。瞋九龍の子孫でありながら代々才に恵まれず、瞋九龍の華やかな経歴と比べると父も祖父もどこか平凡さが拭えない。
野次馬たちは口々に捨て台詞や文句を言って去ってゆくが、瞋熱燿はそれを気に留めることもなく、国師と鸞快子の元にやってきた。
「詳しい話はあとにしましょう。奥にご案内します、こちらにどうぞ」
意外なことだが、普段は冴えないと思っていた瞋熱燿の一連の所作はとても手馴れている。伊達に長年五行盟で受付をしていたわけではないようだ。
人が出入りすることも多い手前、ちょっとした諍いや予想できない事態にも難なく対応することができる。
「受付担当……と一口に言っても訪れる人は様々ですから。彼のこういった対処能力は頼もしい限りですね」
鸞快子たちのあとに続いて歩く凰黎が、瞋熱燿の後ろ姿を見ながら感心したように言った。
「ほんとだな、俺もびっくりした。あいつって結構凄いんだ」
凰黎の言葉に、煬鳳も同意する。正直に言って、今回は瞋熱燿のことをかなり見直した。彼は武術の才がないことを嘆き、受付担当であることに不服そうではあったが、煬鳳たちは彼のお陰で本当に助けられたと思う。
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