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やがて瞋熱燿は本部の中でも奥まった場所にある部屋に煬鳳たちを案内してくれた。
「ここなら人通りもあまりありません。周囲の気配にさえ気を配っていれば、内密の話もできるでしょう」
「瞋熱燿、今回は本当に助かった」
礼を言った鸞快子に、慌てて瞋熱燿は首を振る。
「そ、そんな鸞快子様! 畏まらないで下さい! 僕は皆さまを案内しただけで……あっそうだ!」
忙しなく瞋熱燿はあわあわと焦ったあと、動きを止めて二度三度深呼吸をした。どうやら国師に挨拶をしていなかったことを思い出したらしい。彼は呼吸を整えたあと改まって国師に向かい、手を前で合わせると深々と頭を下げた。
「国師様、火行瞋砂門の瞋熱燿がご挨拶申し上げます。……国師といえば、睡龍にはおりません。恐らくは睡龍の外から来られたのですよね?」
「瞋熱燿殿。仰る通り、私は惺弦から参りました。本来不可侵の睡龍に国師が訪れることはあまり歓迎されることでないというのは存じております。しかし睡龍を超えて九州全体にも関わる火急の用向きがあり、こうして参った次第です。皆さまの周りをお騒がせすること、どうかお許し下さい」
瞋熱燿の挨拶を受けて、国師もまた彼に丁寧に頭を下げ返す。
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