09:実事求是真凶手(真犯人)

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「それで、最近はじめに書き留めておいた数と、あとから数えた数が合わないことが多くて。変だなあと思って、ずっと原因を調べていたんです」 「それってお金が使い込まれてたりするやつか?」 「いいえ、死体です」 「……」  なぜはじめに『死体』だと教えてくれなかったのか。  肝心なことを先に言わないのは瞋熱燿(チェンルーヤオ)の性格らしい。 「初めに気づいたのは揺爪山(ようそうざん)の一件よりももう少し前のことです。近くの森で妖邪(ようじゃ)が出て、瞋砂門(しんしゃもん)の門弟を含めた何人かが妖邪(ようじゃ)退治に向かいました」  はじめは下級の妖邪(ようじゃ)だと思っていた。しかし彼らの想定より妖邪(ようじゃ)は凶悪で、妖邪(ようじゃ)には逃げられてしまい、さらに襲われた村人が数人犠牲になったのだという。  逃げた妖邪(ようじゃ)を捕まえる手掛かりを探すため、門弟たちは襲われ亡くなった村人を五行盟(ごぎょうめい)本部へと運び込んだ。死体に残る傷の具合などを調べたお陰で、妖邪(ようじゃ)の正体が疫鬼の変じたものであることが分かった。  最終的には疫鬼の行方を突き止め退治したことにより、五行盟(ごぎょうめい)としての体面を保つことができたのだが、問題があったのは事件が終わったあと。  ――調査した遺体を家族の元に返そうとしたのだが、遺体の数が足りない。  瞋熱燿(チェンルーヤオ)は几帳面な性格であったため、運び込んだ人物の名前や身元を全て書き留めておいた。それなのに、いつの間にかいたはずの人物が消えている。
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