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「それで、最近はじめに書き留めておいた数と、あとから数えた数が合わないことが多くて。変だなあと思って、ずっと原因を調べていたんです」
「それってお金が使い込まれてたりするやつか?」
「いいえ、死体です」
「……」
なぜはじめに『死体』だと教えてくれなかったのか。
肝心なことを先に言わないのは瞋熱燿の性格らしい。
「初めに気づいたのは揺爪山の一件よりももう少し前のことです。近くの森で妖邪が出て、瞋砂門の門弟を含めた何人かが妖邪退治に向かいました」
はじめは下級の妖邪だと思っていた。しかし彼らの想定より妖邪は凶悪で、妖邪には逃げられてしまい、さらに襲われた村人が数人犠牲になったのだという。
逃げた妖邪を捕まえる手掛かりを探すため、門弟たちは襲われ亡くなった村人を五行盟本部へと運び込んだ。死体に残る傷の具合などを調べたお陰で、妖邪の正体が疫鬼の変じたものであることが分かった。
最終的には疫鬼の行方を突き止め退治したことにより、五行盟としての体面を保つことができたのだが、問題があったのは事件が終わったあと。
――調査した遺体を家族の元に返そうとしたのだが、遺体の数が足りない。
瞋熱燿は几帳面な性格であったため、運び込んだ人物の名前や身元を全て書き留めておいた。それなのに、いつの間にかいたはずの人物が消えている。
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