110人が本棚に入れています
本棚に追加
じっと瞋熱燿の話に耳を傾けていた国師が、口を開いた。鸞快子に促され、国師は「気になっていたのですが」と続ける。
「盟主様は一体どこに亡くなった方を運んだのでしょうか。……そして、なぜそれを教えて下さらないのでしょう」
「申し訳ありません、国師様。僕もそれを知りたいくらいです」
瞋熱燿は申し訳なさそうに国師に答えた。
「思うのですが……」
今度は凰黎が口を開く。
「盟主様お一人で移動させることは可能なのでしょうか? 遺体の数が少なければ可能にも思えますが、数が多くなれば当然、盟主様お一人でことを片付けたと考えるのは難しいですよね? 初めの頃はいざ知らず、揺爪山ではそれなりの人数が亡くなったはずです。誰かしら手伝っているのでは?」
「それが……誰に尋ねても分からないというのです」
瞋熱燿は俯く。彼がそう言うのだから、恐らく尋ねたことは事実なのだろう。
「なるほど。ならば……何か別のものに偽装して運ばせた、というのは考えられませんか? どんな理由があったかは分かりませんが、死体を別の物だと称して門弟たちに移動させた。それなら可能ではないでしょうか」
「あっ……確かに! でもなぜ?」
「それは分かりませんが……盟主様に何かお考えがあったのかもしれません。運び出した荷物などの記録をつけていたら……」
「あります!」
最初のコメントを投稿しよう!