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瞋熱燿は大きく頷くと「すぐに取ってきます!」と言って足早に部屋を出て行った。それがあまりの勢いだったため、みな呆気に取られてしまい、彼の出て行った格子戸を暫し見つめるだけ。
「なあ、凰黎……」
煬鳳は凰黎の袖を引く。
「どうしたのですか? 煬鳳」
「うん。……俺たち、五行盟に火龍を鎮める協力を求めて来たけど、本当にこのまま盟主に相談していいのかな……」
これまでの話を聞いて、途方もない不安が襲ってきた。いままでの話を聞いたら、なんだか五行盟に助力を請うのは難しい気がしてきたからだ。
「そうですね。私も少し……不安になってきました。我々はいま、何をするのが最善であるのか。それすらまだはっきりと見えていないのですから」
ここに来て初めに会えたのが他の誰でもなく、瞋熱燿で良かったと心の底から思う。もしも他の門派――特に、瞋熱燿以外の瞋砂門と雪岑谷の者であればこうはいかなかっただろう。
瞋熱燿はすぐに何冊かの綴じた紙束を抱えて戻ってきた。彼が入ると鸞快子がすぐに部屋の周囲に術を張り巡らせる。
「お待たせしました! ここ最近の五行盟本部の物品管理・入出記録を持ってきました。全て僕が管理しているので、間違いはないはずです」
「例えば夜こっそりと運び出す可能性は?」
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