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凰黎がすかさず瞋熱燿に尋ねる。
いくら記録がしっかりつけられていても、秘密裏に運び出されたものであるなら記録はつかないからだ。
瞋熱燿は手早く紙束をめくってゆく。
「夜間も見張りと門番はかなりの人数がいます。仮にそうだとして――彼ら全てに秘密を守らせるのは盟主様でも難しいでしょう。場合によっては自分より大きな物を圧縮して運ぶことも可能ですが、やはり数を考慮に入れるとなると偽装して堂々と運ばせるのが一番簡単かと思います……あっ!」
「どうした?」
手を止めた瞋熱燿に煬鳳は尋ね、彼の開いている紙束に視線を向けた。……が、几帳面にぎっしりと書かれている記録を見た瞬間、煬鳳は眩暈に襲われる。
(駄目だ、全然分からないぞ……)
文字はもちろん読めるのだがいかんせん細かすぎる。あまりに整然と書き連ねられているものだから、なんだか精細な模様を見ている気持ちになってしまう。
「瞋熱燿、何か見つけましたか?」
「はい。静公子。ここを見て下さい」
瞋熱燿が指し示したのは氷を運び出したことを示す記録だった。
「氷、ですか? そういえば私も頼まれて、何度か氷を貯蔵するための地下倉庫に術を施したことがありましたね。記録ではかなりの氷を出しているようですが、このような大量の氷が必要になることはあるのですか?」
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