09:実事求是真凶手(真犯人)

33/77
前へ
/1358ページ
次へ
 先導する瞋熱燿(チェンルーヤオ)のあとに続き、煬鳳(ヤンフォン)たちも歩き出す。時折見回りの目を掻い潜りながら静かに進んでゆくと、側房のさらに奥の裏側に古びた倉を見つけることができた。隠れるようにひっそりと建つ家屋は、夜の中にあってなお昏く影を落とし陰鬱な印象を与えている。 「ここです。……ですが、先ほども言ったように鍵が無いので開けることは難しいかと……。何より古いものなので既に錆ついていて、仮に鍵があっても開けることは難しい可能性もありますが……」 「少しいいですか?」  凰黎(ホワンリィ)は倉庫に近寄って、扉の閉じられている錠の部分の観察を始めた。 「……錠の表面は確かにかなり錆が浮いていて、ぱっと見ではとても使い物になるとは思えません。しかし、驚くほど内部の音は滑らかに聞こえてくることから……定期的にこの鍵は使われているのだと思います」 「そんな、まさか!?」  驚く瞋熱燿(チェンルーヤオ)凰黎(ホワンリィ)は肩を竦め、錠に向かって何か唱えると、軽快な鍵音が静けさの中にひとつ響く。気づけば凰黎(ホワンリィ)は白く光る棒のようなものを握っており、恐らくはそれで鍵を開けたのではないかと煬鳳(ヤンフォン)は思った。 「開いたのか?」 「ええ。この通りね」  慎重に倉庫の扉に手をかけると、ゆっくりと開く。  瞋熱燿(チェンルーヤオ)はまだ信じられないようで、何度も扉の鍵を確認している。 「本当だ……でも、一体、なぜ!?」 「鍵を紛失した、ということ自体が嘘だったのだと思いますよ。入りましょう」
/1358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

111人が本棚に入れています
本棚に追加