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迷いのない足取りで凰黎は倉庫の中に足を踏み入れるが、内部は外よりもさらに真っ暗だ。
煬鳳は急いで袖の中から黒曜を呼び出して、凰黎の傍に飛ばす。
「普通の灯りじゃ目立ちすぎる。少し暗いけど黒曜に照らして貰おう」
「助かります、煬鳳」
黒曜はささやかに鳴き声をあげ、紫に光る球体に姿を変えた。放たれる光は決して明るくはないが、暗闇よりは少し明るい。目立たぬように辺りを照らすには比較的有効な手段だろう。
「中は狭いし、大したものはありませんね」
見回しながら瞋熱燿は言う。凰黎と煬鳳は屈みながら床を照らし、埃の被っていない場所を探した。
「あった!」
見つけたのは煬鳳だ。予想通り、他とは埃の積もり方の違う部分があったのだ。煬鳳はそれを凰黎と瞋熱燿に見せ、床板の隙間に手を掛けた。
――開いた!
案の定、床板は跳ね上がり、地下への階段が姿を現す。簡単すぎるとは思うが、瞋砂門自体の陣法も強力なものであるし、本来なら倉の鍵は存在しないことになっていたわけで、それを加味すればこれでも慎重な方ではあるだろう。
「っ……二人は俺のあとについてきてくれ。それから、口元と鼻はできるだけ隠して、変な臭いがするみたいだから」
階段の奥から風に乗って微かに漂ってきた異臭。それは決して心地の良い部類の者ではなく、嫌悪感を催すものだった。
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