09:実事求是真凶手(真犯人)

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 袖で鼻と口を隠すと、煬鳳(ヤンフォン)は足場に注意しながら階段を下りてゆく。少し湿り気のある空気が肌に触れ、なんとも心持ちが悪い。  しかしながら、乾いた石段ではないことが幸いして、足音は殆ど響かないようだ。 「階段を下りるのは、黒曜(ヘイヨウ)の光だけじゃ流石に心許ないな」  足場も殆ど見えず、階段のあちこちに生えている苔でうっかりすると滑ってしまいそうだ。仕方なく煬鳳(ヤンフォン)は顔を上げ、上から降りてくる凰黎(ホワンリィ)に「悪いんだけど、灯りを貰えるか?」と頼む羽目になってしまった。 「構いませんよ」  凰黎(ホワンリィ)の手のひらから燐光(りんこう)が湧き上がり、煬鳳(ヤンフォン)の手のひらへと飛んで行く。光の玉は煬鳳(ヤンフォン)を慕うかのように飛び回り、足元を照らし出す。 「凰黎(ホワンリィ)、有り難う」  煬鳳(ヤンフォン)凰黎(ホワンリィ)に礼を言うと、再び慎重に石の階段を降り始めた。  案の定と言えば案の定だが、階段を一段ずつ降りて行くたび鼻を突く臭いは強くなる。不快感を伴う臭いに対しておおよその見当はついているが、できればあまり考えたくもない、と煬鳳(ヤンフォン)は思う。  けれど階段の一番下まで辿り着いたとき、煬鳳(ヤンフォン)の予想は大方当たっていたことを想い知らされた。 「なんだこれ――!?」  煬鳳(ヤンフォン)の上擦った声を聞いて、凰黎(ホワンリィ)瞋熱燿(チェンルーヤオ)が急いで煬鳳(ヤンフォン)に続く。彼らもまた、光に照らし出された光景を見て言葉を失ってしまった。
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