111人が本棚に入れています
本棚に追加
「お爺様は……一体ここで何をなさっていたのでしょうか……。いえ、そもそもこのような所業、本当にお爺様がされていたのでしょうか!? あるいは別の誰かがこの倉庫を……」
「まあ……そういった可能性も現段階では、あるかもしれないな」
あの死体が五行盟から運んだものであると決まったわけでもない。確たる証拠を見つけるまでは、そう決めつけるのは早計だ。
牢の数はさほどなかったが、どれも空っぽで人のいる気配はない。しかし、かつては使われたであろうことは、何となく中の様子から察することができる。
(なんでこんなもんが倉庫の下にあったんだ……?)
少なくとも瞋砂門で暮らす瞋熱燿がこのことを知らなかったようだし、瞋砂門の大部分の人間は倉庫の鍵が開くということを知る者はそういないだろう。
歩みを進めるにつれて漂う臭いは変化していき、やがて鉄格子の向こう側に人影が見えてきた。
「凰黎……!」
驚き煬鳳は凰黎を振り返る。凰黎の後ろに張り付いていた瞋熱燿が恐々と背中越しに人影を見るが、あまりに恐ろしかったのか小さく「ひぇっ!」と叫んでまた隠れてしまった。
(仕方ないけど……頼りない……)
凰黎を先行させるようなことはしたくない。煬鳳は「凰黎はここで待ってて」と言うと、人影のいる牢屋に近づいた。
最初のコメントを投稿しよう!