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――こいつは一体誰なんだ?
もう少し近くで様子を見てみたい。そう思っていると凰黎が煬鳳の傍にやってきた。
「開けましょうか?」
「できる?」
当然です、と凰黎は頷くと、牢屋の錠に手を翳す。白い光が凰黎の手のひらに集まると、それは鍵のような形に変化した。
「さっきもそれ、やってたよな」
「はい。氷で鍵穴から鍵の形を作りました。先ほどはもう少し特殊な鍵でしたので、鍵穴に差してからもうひと手間加えましたが」
「……」
凰黎は意外なところでとても大胆だ。まさかそんな大胆な開け方をしていたなんて、先ほどは全く気づかなかった。
「その、凰黎って本当になんでもできるんだな……びっくりしたよ」
「嶺主様が知ったらひどく怒るでしょうが……。今回は背に腹は代えられないと思いまして」
困った顔で凰黎は肩を竦める。しかし、凰黎がそうしなかったら倉庫の中には入れなかったろうし、捕まっている人がいる牢屋を開けることも難しかっただろう。
煬鳳は慎重に牢屋の扉を開けると、牢の中へと入った。
一歩、また一歩。慎重に近づいてあと一歩というときだ。突然目の前の人物が目を見開き、目にも留まらぬ速さで煬鳳のことを蹴り上げようとした。煬鳳は身を捩って男の蹴りをかわす。
「っ!」
かわしたと思ったのも束の間で、間髪入れずにもう一撃が煬鳳に迫る。
――こいつ……かなりできるぞ!
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