09:実事求是真凶手(真犯人)

39/77
前へ
/1358ページ
次へ
 ――こいつは一体誰なんだ?  もう少し近くで様子を見てみたい。そう思っていると凰黎(ホワンリィ)煬鳳(ヤンフォン)の傍にやってきた。 「開けましょうか?」 「できる?」  当然です、と凰黎(ホワンリィ)は頷くと、牢屋の錠に手を翳す。白い光が凰黎(ホワンリィ)の手のひらに集まると、それは鍵のような形に変化した。 「さっきもそれ、やってたよな」 「はい。氷で鍵穴から鍵の形を作りました。先ほどはもう少し特殊な鍵でしたので、鍵穴に差してからもうひと手間加えましたが」 「……」  凰黎(ホワンリィ)は意外なところでとても大胆だ。まさかそんな大胆な開け方をしていたなんて、先ほどは全く気づかなかった。 「その、凰黎(ホワンリィ)って本当になんでもできるんだな……びっくりしたよ」 「嶺主(りょうしゅ)様が知ったらひどく怒るでしょうが……。今回は背に腹は代えられないと思いまして」  困った顔で凰黎(ホワンリィ)は肩を竦める。しかし、凰黎(ホワンリィ)がそうしなかったら倉庫の中には入れなかったろうし、捕まっている人がいる牢屋を開けることも難しかっただろう。  煬鳳(ヤンフォン)は慎重に牢屋の扉を開けると、牢の中へと入った。  一歩、また一歩。慎重に近づいてあと一歩というときだ。突然目の前の人物が目を見開き、目にも留まらぬ速さで煬鳳(ヤンフォン)のことを蹴り上げようとした。煬鳳(ヤンフォン)は身を捩って男の蹴りをかわす。 「っ!」  かわしたと思ったのも束の間で、間髪入れずにもう一撃が煬鳳(ヤンフォン)に迫る。  ――こいつ……かなりできるぞ!
/1358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

111人が本棚に入れています
本棚に追加