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「谷主様、どうされたのですか?」
「実は少し前にここに睡龍の外から来た者が連れてこられたのだ」
煬鳳たち三人は顔を見合わせる。
「まさか……その方を遣わしたのは……」
恐る恐る尋ねる凰黎に吾太雪は嗄れた声で「うむ……」と言った。
「彼は惺弦という国の国師に遣わされた使者であったが、国師の元に戻る前に拷問で死んでしまった。……儂はせめて彼のために、遺品を何か持ち帰って国師に彼の遺言を伝えたいのだ」
「……」
なんということだろう。国師の遣わした兵士と言えば阿駄のことに違いない。
まさかあのような姿になって冥界から逃げ出しても国師に必死で睡龍の危機を伝えようとしていた彼が、あろうことか五行盟の盟主である瞋九龍にこのような仕打ちを受けたとは思いもよらなかった。
煬鳳は「俺が探す」と言って、隣の牢屋の中に飛び込んだ。というのも、吾太雪は相当衰弱していて危険な状態であり、凰黎も彼を支えたまま探すことは難しいだろうと思ったから。
「ぼ、僕も探します!」
はじめは呆然としていた瞋熱燿も、煬鳳の意図に気づいてすぐさま牢屋に入ると、地面に何か落ちていないかと探し始める。
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