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「……あった!」
崩れた岩の影になった部分の隙間に、何かが光っている。すかさず隙間に手を差し入れてみると、小さな耳飾りのようなものを見つけることができた。
「たぶん激しく叩かれたときにでも外れて吹っ飛んだんだろうな」
霧谷関で出会った、悲惨な状態の阿駄の様子を思い出し、煬鳳は顔をしかめる。国師に地下でのことを話したらさぞ辛いだろうが、彼には知る権利があるだろう。
それに、吾太雪は煬鳳たちよりももっと詳しく阿駄の遺言を聞いているかもしれない。
煬鳳は耳飾りを丁寧に布で包むと、懐に大切に仕舞った。
ここで成すべきことは一先ず終わったはずだ。
瞋九龍の所業が明らかになれば、恐らく五行盟は瞋九龍には従わない。そうなれば火龍の件で皆の協力も集めやすくなるだろう。特に、いままで煬鳳に敵意を向けていた雪岑谷については、仮に彼の言う通り吾太雪が瞋九龍によって捕らえられていたとなれば彼を助け出したことで、より味方になってくれる確率が上がる。
今すぐここを出て、詳しい話を聞かねばならない――そう考え、煬鳳は凰黎を見る。
「急いでここを出ましょう。吾谷主を連れ出した以上、この倉庫に侵入者があったことは必ず分かってしまうでしょうから」
「そうだな」
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