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凰黎の言葉を合図に煬鳳たちは再び出口へと向かう。時間を費やしたとしてもせいぜい数刻程度。朝になるのもまだ遠いから余裕はあるはずだ。
「瞋熱燿、前を頼めるか? 俺は吾谷主を支えるから」
「はっ、はい!」
いまの状態を理解はしているが、吾太雪の心情としては瞋熱燿の肩を貸りるのは躊躇われるだろう。ならば瞋熱燿には先を歩いて貰い、煬鳳と凰黎は吾太雪が歩く手助けをした方がいい。
酷い臭いには慣れないが、なんとか堪えて登ってきた階段を上る。相当衰弱していたにもかかわらず、吾太雪の歩みは危なっかしいながらもしっかりしていた。
倉庫の外に出ると、凰黎が元の状態になるように鍵を閉める。外から見たら誰も侵入したとは思えない。
「さあ、急いで外に出ましょう!」
気づけば足取りが段々と速くなる。やってきたときと違って、いま煬鳳たちの肩には吾太雪がいる。誰かに見つかれば面倒なことになってしまう。
だからこそ、みな焦っているのだ。
「裏門を開けたらすぐに気づかれるはずです。僕がうまく誤魔化しますから、皆さんはここを出たらすぐに隠れて下さい」
裏門の前で瞋熱燿はそう言った。
「大丈夫なのか? 瞋熱燿」
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