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「心配しないで下さい。……面倒な方とのやり取りも、その場しのぎの取り繕いも、普段から慣れっ子ですから」
そう言った瞋熱燿は少し笑っている。笑ってはいるが、少しぎこちないのは彼も緊張しているのだ。緊張してはいるが、煬鳳や吾太雪をここから脱出させるために、彼は同じ門派の者たちと対峙する。
「貴方に負担をかけて申し訳ありません。どうか気を付けて」
「有り難うございます、凰殿。元々は我々瞋砂門が引き起こしたことですから、これくらいは当然です。……では、門を開けます!」
瞋熱燿が門を開けると、煬鳳と凰黎は担いだ吾太雪を連れてすぐさま近くの物陰に身を隠す。少し離れた場所まで瞋熱燿が歩いていくと、瞋砂門の門弟たちが瞋熱燿を見つけて寄ってきた。
「瞋公子。どうされたのですか?」
「いえ、なんだか眠れなかったので少し散歩をしようと思って」
瞋熱燿と門弟たちは他愛のない話をしている。暫く会話をしたあと、門弟たちは「お気をつけて」と言ってやってきた方向へと戻っていった。
「どうやらうまく行ったようですね……」
注意深く瞋熱燿のやり取りを見守っていた凰黎だったが、門弟たちの姿が消えてようやく安心したようだ。緊張しきりだった表情がようやく和らぎ、小さく息を吐く。
「お爺様……!?」
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