111人が本棚に入れています
本棚に追加
「――随分と調子が良さそうだな? まるで憑き物が取れたかのようにそなたの体からは火行の力が溢れている。よもやそなたは………………誰かに何かしてもらったのではないか?」
瞋九龍は目と鼻の先まで瞋熱燿に近づき、彼の両肩を掴む。余程強い力だったのか、瞋熱燿が呻いた声が煬鳳たちのところまで届く。
煬鳳は鸞快子が彼に言った言葉を思い出した。
『恐らく気づくことができるのは相当修為が高い人物か、それとも――この影を君たちに仕込んだ張本人か』
瞋九龍の修為は確かに相当高い。しかし、彼は瞋熱燿や彼の父と共にいて彼らが幼い頃より、ただの一度も彼らの霊脈に絡みつく影に言及したことはなかったはずだ。もしも彼に隠す意図がなかったのなら、とうの昔に彼らはもっと自分たちの実力を発揮することができたはず。
(なら、考えられることはただ一つ――!)
瞋熱燿の目が見開かれ、信じられないものを見るような顔つきに変わる。
「誰にやってもらったんだ? お前に入れ知恵をした奴がいるのか? どうなんだ?」
瞋九龍の目が赤く光った。
半泣きの瞋熱燿の足は震え、今にも頽れてしまいそうだが瞋九龍の掴む手がそれを許さない。
「あ、あ、あ……」
「言え! 誰がやった!」
このままでは不味い、煬鳳は二人の間に飛び出した。
最初のコメントを投稿しよう!