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背後から迫る熱を感じ、煬鳳は言葉を切った。振り向きざまに背負った永覇を中心に据え、瞬時に霊力で防壁陣を展開する。即席のものゆえに凰黎の神侯ほど強固なものではないが、今はこれで十分だ。
むせ返るような炎が周囲を包み、煙のように舞い上がった。視界の全てが炎で覆われる。――燃え盛る中から黒い影が生まれ、何であるかを認識するよりも早く煬鳳に襲い掛かった。
「くっ!」
瞋九龍がかつて火龍を倒したとされる灼熱色の槍が永覇とぶつかり合い、衝撃で永覇ごと煬鳳は吹っ飛んだ。
叩きつけられる瞬間に咄嗟に頭だけは守る。永覇を背中に再び収め、煬鳳は凰黎の元へと走り出す。
「凰黎! いまのうちにとにかく逃げるぞ!」
煬鳳は二人を支える凰黎から、瞋熱燿を受け取った。
瞋九龍の攻撃が煬鳳の急所を狙うであろうことは予想がついていたので、防壁陣は炎を防ぐことだけに専念し、煬鳳自身は瞋九龍の攻撃を永覇で受け止めることに集中した。そして、攻撃を防ぐと同時に吹っ飛ばされる衝撃で瞋九龍との距離を稼ぐことも考慮に入れたのだ。
――それでも、伝説の英雄の力はとてつもない。
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