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防いだにもかかわらず、衝撃で体のあちこちがずきずきと痛む。痛みに堪え死に物狂いで逃げなければ、すぐに瞋九龍に追いつかれてしまうだろう。
「煬鳳、ここは私が……」
今度は凰黎が瞋九龍の足止めをするつもりだ。しかし、こちらは手負いの二人を抱えている。加えて煬鳳もいまは満足に走ることができない。
「駄目だ! 凰黎ひとりであいつを相手にしても、時間を稼げたとしても、俺だけで二人を連れて逃げ切るのは不可能だ」
凰黎が唇を噛む。いま全力の瞋九龍から逃げ切ることがいかに難しいことか、凰黎も痛いほど理解している。
(せめて、逃げるためのまともな手段を考えてくるべきだったな……)
霊力が自由に使えるようになったいま、怖い物なんてないと思っていたのだ。それなのにまさか伝説級の人物と相対することになろうとは、さすがに煬鳳も思わなかった。
「くっ、ははははは! 若造が、笑わせる!」
迫る瞋九龍の声。
万策尽き果て――煬鳳が諦めそうになったとき。
「危なっかしいことしてるんじゃねえよ!」
天から降り注ぐ聞き覚えのある声。
次いで竜巻のような風が吹き荒れたかと思うと、瞋九龍の周りを包み込んだ。
「彩藍方!?」
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