09:実事求是真凶手(真犯人)

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(生きていたのが不思議なくらいだもんな……)  感心しながら吾太雪(ウータイシュエ)を見ていると、凰黎(ホワンリィ)煬鳳(ヤンフォン)の耳元に唇を寄せる。 「雪岑谷(せきしんこく)は常日頃から厳しい雪山での修行などを頻繁に行っていると聞きました。彼の強靭さはその修行の賜物でしょう」 「そ、そうなんだ」  吾太雪(ウータイシュエ)の話より、正直凰黎(ホワンリィ)の唇が耳を掠めたことに煬鳳(ヤンフォン)はどきどきしてしまった。お陰で凰黎(ホワンリィ)が説明してくれたことの大半は記憶の向こうに飛んで行ってしまい、殆ど思い出すことができない。  彼がなぜ瞋砂門(しんしゃもん)にいたのか、何が起こったのか。分からないことは沢山ある。しかし全てはまず、蓬静嶺(ほうせいりょう)について彼らの安全を確保してからだ。 「見えてきた、降りるぞ!」  鉄鉱力士(てっこうりきし)が急速に高度を下げる。凰黎(ホワンリィ)はその間も後を追跡されていないか入念に周囲を確認しているようだ。 「凰黎(ホワンリィ)」 「……大丈夫、追っ手は来ていないようです。しかし、我々を匿える門派は限られていますから、探すまでもない、といったところかもしれません」  万が一瞋九龍(チェンジューロン)蓬静嶺(ほうせいりょう)に攻め込んできたら……。  考えるたび煬鳳(ヤンフォン)は気持ちが重くなる。  凰黎(ホワンリィ)の大切な人たちがいる場所を、巻き込みたくはないのだ。
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