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瞋熱燿も肩の怪我を手当てして貰い、震える足もいったんは落ち着いたようだが、顔色は悪い。己の門派に関わること、しかも地下室で見たあの惨状のことを何一つ知らずにいままでいたこと。自分が英雄だと思っていた瞋九龍の恐ろしい形相、それらをすぐに他人事と思えるはずもないのだ。
暫く蓬静嶺の客房で清粛たちは吾太雪の手当てをしていたが、暫くすると皆を呼びに戻ってきた。どうやら吾太雪が彼らに頼んだらしい。
「長時間話をするのは難しいでしょうが……どうしても皆さんに話さねばならないことがあると仰ったので」
寝台に上体だけを起こすようにして、吾太雪は煬鳳たちが集まるのを待っていた。傍の盆には清大秧が煎じた薬湯の器が置いてある。
「助けて頂いたうえ、このような姿でお呼び立てして申し訳ない」
蓬静嶺で伸び放題だった髪を整え沐浴を済ませ、洗いたての衣袍を纏う彼の姿は、痩せてこそいるものの目に宿る光は強く、やはり谷主たる威厳を感じさせた。
瞋熱燿も肩の怪我を手当てして貰い、震える足もいったんは落ち着いたようだが、顔色は悪い。己の門派に関わること、しかも地下室で見たあの惨状のことを何一つ知らずにいままでいたこと。自分が英雄だと思っていた瞋九龍の恐ろしい形相、それらをすぐに他人事と思えるはずもないのだ。
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