09:実事求是真凶手(真犯人)

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 豪快にして圧倒的。最強の男――吾太雪(ウータイシュエ)にとって瞋九龍(チェンジューロン)はまさに言葉通りの人物だったのだ。彼の感動は一言では言い表すことはできない。  その日から吾太雪(ウータイシュエ)五行盟(ごぎょうめい)のために、そして瞋九龍(チェンジューロン)のためにと陰に日向に邁進をつづけた。  あるときは瞋九龍(チェンジューロン)の片腕として僻地に赴き、またあるときは強大な妖邪(ようじゃ)と戦うため、命を投げ出す覚悟で彼と共に立ち向かう。伝説の英雄が己の背で戦っている。そう思うだけで吾太雪(ウータイシュエ)は踊りだしたくなるほど心が軽く、英雄のために働けること、それが何よりも幸せであると彼は感じていた。  些細な違和感を感じたのは二人で山奥の妖邪(ようじゃ)を退治するために出向いたときだ。かつてないほどの凶悪さと強さを持った妖邪(ようじゃ)と相対し、不覚にも吾太雪(ウータイシュエ)は深手を負った。意識を失った彼が目を覚ましたときには妖邪(ようじゃ)の気配は既になく、瞋九龍(チェンジューロン)が焚き木の傍に座っているだけ。 『気が付いたようだな。心配したぞ』  吾太雪(ウータイシュエ)が気を失っている間に、瞋九龍(チェンジューロン)はたった一人で妖邪(ようじゃ)を倒したのだ。  せっかく英雄と共に妖邪(ようじゃ)退治に赴いたというのに、結局彼の足手まといになってしまったと、吾太雪(ウータイシュエ)は己の無力さを嘆いた。  瞋九龍(チェンジューロン)はそんな彼に、これから強くなればいい、と優しく諭す。
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