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彼への感謝を感じた最中に、ふと吾太雪は不可解なことに気づいた。
――妖邪の死体は一体どこに?
吾太雪は瞋九龍に妖邪の死骸はどこにやったのかと尋ねたのだが、彼は山の悪い気に乗っ取られてはいけないから燃やしてしまったのだと言う。彼の指し示したたき火の中には、妖邪であった獣らしき骨があった。
獣が変じたもの、死人が変じたもの、実体のない鬼。全てを総称して妖邪と呼んではいるが、実際のところ彼らは細かく細分化されるのだ。
今回退治したのは獣が変じた――実体のある妖邪に分類される。
確かに凶悪な妖邪を生み出した山には、良くない気配が充満していた。死んだ妖邪の処分すら手伝えなかった自分の無力さが情けなかったが、早めに対処しておかなければ、妖邪は新たな陰気を吸収し再び立ち上がって襲い掛かっていたかもしれない。
瞋九龍は基本的に盟主であり、自ら戦いに赴くようなことは少なかったのだが、極端に強い妖邪と戦うときなどは自ら先陣をきって妖邪退治に赴くことも多かった。
圧倒的な強さを誇る火龍殺の五行盟盟主は、彼一人でも妖邪の大群を圧倒するほどの強さを誇る。
いつの日であっても勝利するたび、羨望の眼差しが彼に向けられていた。
しかし同時に疑念を感じることもないわけではない。
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