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突然烈火のごとく怒り散らし、理不尽に他人に当たり、修練の場では執拗に相手をいたぶり続けた。
生きるか死ぬかの世界だからこそ、敢えての厳しさであると人は言う。
盟主の瞳に凶悪な紅き光が灯っていたことに気づいたものは多くはない。
その光は獣か妖邪の目にも似て、残忍な本性を映し出しているかのようだった。
瞋九龍は日ごとに感情の起伏が激しくなってゆき、門弟や五行盟本部の者たちが宥めても収まらない日も少なくはない。それこそ、気でも触れたのかと思うほど。
英雄色を好むというが、彼もまたあちこちの妓楼へと足を運び、幾多の女を連れ帰った。しかし、暫くすると彼の周りを取り巻いていた女たちはすっかり別の女に代わっている。
機嫌の良いときは豪勢な食事を貪り、皆に酒をふるまい、日ごろの苦労をねぎらった。
彼の栄光と悪評とがせめぎ合い、しかし睡龍の地を救った英雄であることだけは動かしがたい事実。それゆえに、いかに彼が暴虐の限りを尽くしたとしても、やはり皆はそれを耐え、彼の機嫌を取るしかない。
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