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道理で、閉閑修行に入ったまま一向に出てこないわけだ。当人は瞋砂門の地下室に捕らえられていたのだから。出られるはずもない。
門弟たちは彼が捕らえられているがために、仕方なく『閉閑修行で山奥に籠もっている』などという嘘を言わねばならなかったのだ。
「瞋九龍は人ではない。……あれは獣そのものだ。我々が英雄と崇めていた火龍殺は、英雄などではなかった……!」
血を吐くように苦しい形相で吾太雪は低く叫んだ。
吾太雪から明らかにされたのは驚くべき事実だった。
何が起こったか。死体が消える話と瞋砂門の地下に積まれた白骨を見れば、何があったかは想像に難くない。
「私は彼の所業を見た。そしてそれを彼に見つかってしまった。ゆえに私はそのまま瞋砂門へと連れ去られ、地下室に拘束されていたのだ。……一体どれほどの時間であっただろうか……」
吾太雪は苦々しい表情で吐き捨てた。
「阿駄殿が国師殿に伝えたいと申されていた話を聞いて、なぜ奴がそのような所業をするのかようやく理解できた」
国師は吾太雪の話をじっと聞いていたが、彼から阿駄の名が出たことで僅かに震える。彼とてまさか五行盟盟主の手によって阿駄が命を落とすなど、考えてもみなかったのだろう。
「阿駄は……彼はなんと?」
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