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震える声を懸命に耐えながら、国師は吾太雪に尋ねる。
彼の手には、吾太雪から託された阿駄の耳飾りが握られていた。鸞快子から阿駄とどのような状態で出会ったかを聞いている彼だけに、ある程度の覚悟はしていたはずだ。それでも、やはり実際に起こった事実を聞いた衝撃は計り知れない。
「彼が国師殿に伝えたかったこと。それは……『睡龍は眠らず、火龍は人の中にあり。五行盟の盟主、瞋九龍は人に非ず。彼は龍に支配されており、外見は人であるがその皮の中は火龍そのものである――』」
化け物じみた力を持っていると思ったものだが、当然だ。瞋熱燿に迫った凶悪な顔を煬鳳は思い出す。人を食わんばかりの形相だと思ったが、彼の正体が龍であるのならばあるいは……。
煬鳳はそこまで考えて、考えるのを止めた。
そんなことよりも、気になるのは瞋九龍は何者か、ということだ。
「でも、もしも瞋九龍が火龍だっていうなら、本当の瞋九龍は一体どうしたんだ? それに、実際に龍はこの地に眠っているからこそ、山があり谷がある。睡龍の影響によっていまも地震が起きているわけだしさ」
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