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「瞋九龍は……火龍は一体どうするつもりなのでしょうか? 龍の姿を取り戻してしまうのでしょうか。私たちにできることは何も残されていないのでしょうか……」
先ほどまで吾太雪の世話をしていた清粛が、悲痛な表情で言った。何かしらの力になりたいと、覚悟を決めて父や門弟たちと共に集まった彼ではあるが、いざ睡龍の地全体を覆うほどの巨大な火龍が蘇るかもしれないと聞けば、勝算はそう見いだせるものではない。
万事休すの状態に、どうして良いか分からないのだ。
「睡龍を鎮めるつもりだったのに、まさか頭はバッチリ目覚めてて、意気揚々と復活のために栄養を蓄えてるんだもんな。そりゃ、どうして良いか分からなくなるってもんだ。むしろ鎮めることなんかできるのか?」
彩藍方もまた、清粛と同様に勝算を見いだせていないようではあったが言葉とは裏腹に彼の口調はあっけらかんとしていて悲壮感はない。
「決まっている。火龍の心智の根源である瞋九龍を倒す――それしかない」
声の主へと視線が一斉に注がれる。
言ったのはもちろん――。
「鸞快子! 正気か!?」
これには彩藍方も驚いて彼に聞き返す。
煬鳳は実のところ……鸞快子なら言うだろうな……とは思っていたので、さして驚きはない。同じように考えていたであろう凰黎と視線を合わせ、肩を竦めた。
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