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堪らずに煬鳳は凰黎の袖を引いた。凰黎はいま、どのように思っているのだろうか。煬鳳の視線に気づいた凰黎は、穏やかな眼差しで彼に応える。
「玄烏門の方々の心配をしているのですか? 彼らの殆どは、五行使いではありませんから……瞋九龍と戦うために赴くのは荷が重いでしょう」
凰黎の言う通り、玄烏門の皆は前掌門と夜真を除いて五行の力を使わない。厳しい修行に耐え切ることが出来たのが、結果的に肉体が飛びぬけて強いものだったとか、元々そういった素養が無かった者たちが集まったから、というのもある。
しかし、どんなに肉体が強かろうと炎を操る火龍を前にして、それだけでは無力。
そして夜真は蓬静嶺の門弟である善瀧と二人、煬鳳にとっては凰黎との仲を取り持ってくれた恩人だ。悪戯に危険な目に遭わせたくはない。
煬鳳は否応もなく瞋九龍と戦う。
だから代わりに彼らくらいは玄烏門で門弟たちと共に留守を守っていて欲しい。
そう思うのは我が儘だろうか。
「瞋九龍と互角に戦うことのできる人物は本当に一握りです。それだって完全に互角とはいえないでしょう。なにせ彼は我々とは生きてきた年数が違うのですから」
「うん……」
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